月別花材リストと多色刷図譜
「茶席挿花集」
  
 
 佳気園著、岩崎常正画、芳亭野人編 文政七年 江戸日本橋須原屋茂兵衛 同須原屋佐助の共同出版 三ツ切横長本二十六丁内図版六丁。几例の一部を紹介しよう。

 一、四季の花を十二の月に分けしといへども年の寒暖地の陰陽にて一棟ならずまづ其時の花を尋ね給はば其月と前の月後の月とを一讀あるべし 此の三月のうちよりいけてよき花を得る也 これ時候によりて花に遅速あれば当月ばかりにてはつくさざるゆえ也 (中略)

一、此書佳気園(柿園)翁の集められしを予又岩崎灌園先生に請て漢名を正し 剛定補入す然れども翁の開所をも残せるもの多し 且つ草木異名あまた也 ここには只つねにいわ所の名を記す。

 などと、花期は年や所によって差のあることや、本書の成立並に編集の意とするところを書き加えている。又本文は 正月 去年より咲つづく花 つばき みつまた ぼけ莟 (名に − あるは絵あり) 梅花(ばいくわ) 紅白 未開紅 緑蕚(りょくがく) あ(あ)ほしく(おじく) 座論梅 等数多しくわしくは松岡氏の梅品と云書に出たり いと柳 しだれ柳 六角堂といへる尤長し 福寿草 献歳菊 ▲八重の花あり ろうばい 迎春花 花黄 葉柳に似たり うぐひす ?駝布袋 花うす紅小 (中略) 三月 桃 桜 梨ノ類 山吹 八重桜 数品ありつぼみを用ゆ むさしあぶみ 由践 天南星に似たり花紫 いばら 荊 薔薇トモ ばらトモ 花紅白 紫大小単重等類多し ▲なにはばら一重花 白 ▲はとやばら ▲長八ばら此外色々有 (後略)