出版された二冊目の花伝書
「替花伝秘書」 (かはりかでん)
  著者不詳  第二版 寛文六年(1666)刊
 
 本書初版は、寛文一年(1661)に刊行された。著の記載はないが、内容は池坊流の花伝書であり、出版の前年に没した池坊専存か、当代きっての立花の名手として高名であった池坊専好(二代)であろう。

 この書物は余程売れたか、何らかの理由で版木が失われて出版不能となったのか、寛文六年に二版が出版されている。この版は記載文は替りないが、絵図の一部が省略されたり、画き改められていることで知れる。

 内容は序文に続いて、全文を十七項目に分けて各条立となして論じている。基本理念は、池坊が六角堂と云う仏教寺院の僧侶によって成立した流儀故、当然といえばそれまでであるが、仏教的思想を基としている。

 第一 花に九修滅道の掟の事
(前略)草木の春夏秋冬のけしきもしらず候処に 梵網経に云 一花一億石一こく一尺迦ととかれたり 此文より諸の心くわへず 露あたゝかにして南枝花始てひらくをしんとなぞらへ 須彌をつくり見給うしんじん別ならず其万法一如なり しんたがへば平等ならざる也 しかれは所作ともにこれをやむと云也 其上やくさうゆほんには草木成仏ととかれたり 一瓶立てゝも衆生斉度のためなり よくよく秘すべし 何事も皆一すいの夢またゝきの間也(後略)
 このような文章に続いて 各月、各行事の花の心得、草木の用い方などを記している。