多色刷俳句集
「草名集」
  美濃屋伊六 美濃屋文治郎  文政六癸末春刊
 
 本書は俳諧書に分類すべき書であるが、植物を題材として作句され、植物の種類ごとに分け、多色刷、時に手彩色を加えた図入の俳句集であり、四季を春冬、夏、秋に分けた三部三冊本である。編者は大鶴庵塊翁、画や各人の句は十九人が分けて画いたり、書いたりしている。画家として今日尚名のある、月 、梅逸、玉遷もその中の人々である。

 刊年は文政六癸末春、名古屋本町丁目、美濃屋伊六並に 同町十一丁目 美濃屋文治郎との共版であるが、同じく名古屋の菱屋藤兵衛他の刊本もあり異本もあるらしい。

 内容の一部を紹介すると、春の部は、福寿草から始まり、せり、なづななどの春の七草と続き更にふきのとう、わらび、たんぽぽと続く、
         蒲公英 一名ツヅミクサトモ云
        「皷草や 一 広き 野の小川」 岳芝
        「蒲公英は 笑すましたる 風情かな」 芝方
        「蒲公英や 和らかに打 波の音」イセ巴陵
        「皷草や 蛇篭の竹の 新しき」 堂々次
        「皷草の あれはと野辺に 道も有」 万兆
         
     夏の部に
        「朝顔の 花の上にも 四ツのかね」柳枝
        「蘭の香に 手の置ところ なかりけり」

     秋の部最終丁には
        仙人掌 サチラサツホウ サボテン
        「萬代や サチラサツホの 青き秋」 女性
        うちはさぼてんの図がある。