切花水揚げの秘伝書
「草木養活秘録」 (そうもくやしないいけひろく)
  梅の屋主人著  文政二年刊
 
内題は「四季草木養活録」切花として用いる草木を長く保つ方法を記す。

 先づ目録に目を通してみよう
四季草木剪時の事、并囲方手当の次第、
寒中瓶の水凍らざる事(陶器、竹器は凍って破割して苦労したらしい)

木類揉方曲付様の事、(枝茎を意のごとく曲げる方法)に続き、樹木類、?柳(ぎょりゅう)、金雀花、楓、椿、牡丹、芙蓉、藤、萩、竹。草の類では芍薬、朝顔、秋海棠、菊、桜草、芥子、仙翁花、擬法珠、桔梗、紫苑、貴船菊、鳥兜、草牡丹、薊、檀特草(カンナ)、海老根、萱、芒、葉蘭、万年青、桧扇、水仙。水草類では杜若、河骨、蓮、水葵、沢潟、太藺、葦など、個々の植物名をあげて、詳細に水揚げ方法が記されている。

 古くから竹の水揚げは最もむつかしいとされている。本書では次のように記されている。
「節々のすぐ下に錐にて穴をあけ水をさし入置べし。寒気強き時節は焼酎をさし入置へし。若竹は水揚強く古竹程持兼るなり。(中略)竹節の錐穴から水を差し入るには、口中に水を含み穴より此の方へ強く吸とりてより、口中をゆるめ水をはなしやるようにすべし。竹節篭る故竹の方にて吸入るもの也。多く差入れば長く持ち、少なきは日数も少し。節中程まで入置時一二ヶ月は竹葉枯れ萎まず。  (後略)」

 「草木養活秘録」 梅の屋主人著、文政二年刊、駿河江川町 鉄屋十兵衛とあり、珍しい地方出版である。

 図は青竹節に枝葉を繁らせたまま竹器に造る方法を書き記している。更には割竹の水揚げも書き記す。