ツバキ図譜
「花くらベ」
  楽堂
 
 日本の江戸時代は珍しく平和が長く続さ、その間に世界に例を見ない園芸熱の高まりによって、園芸植物が発展したことを指摘する学者は多い。
 
 徳川二代将軍、秀忠は大変な園芸愛好家であって、「武家深秘録」(慶長十八年成る)に次のような記載がある。「将軍秀忠 花癖あり 名花を諸国に徴し これを後園吹上花壇に栽えて愛玩す 此頃より山茶(ツバキ)流行し数多の珍種を出す」

 秀忠はどれ程のツバキをコレクションしたかは資料として見つかっていないが、江戸期のツバキ資料としては、宮内庁書稜部伝存の「椿花図譜」を第一級の資料として、他に数本の図譜類の伝本が知られている。

 ここで、ご紹介する「花くらべ」は、題簽(だいせん)並に箱表書共に同筆にて、「楽堂」の名があり、たぶん製作者の名であろう。残念ながら年代の記載はないが、花の図は一点一点丁寧に、しかも能筆に画かれ、全百拾余種すべて品種名が書き入れてあるので、他本との校合研究によっては、製作年代、場所など明らかになればと考えている。

 何れにしても寛文、元禄頃の製作であろう。「楽堂」なる作者(?)についてご存じの方はご教示いただきたい