花と葉の手鏡
「牽牛花水鏡」
  与住秋水著、文政元年(1818)刊
 
 著者与住秋水(よずみしゅうすい)は土浦の産。江戸浅草天王寺町に住し、内科医を業とし、薬草の栽培にも詳しかったという。

 本書の内容は、写真で示した通り、当時大流行中の変わり咲きアサガオの花と葉の形状とその呼称を図示し、栽培者の便を計ったもので、その発想は当時としては目新しい。

 前半は花形で四七図、それぞれに名称が付され、丸咲、梅咲、撫子咲等から始まって、台咲獅子、イギリス(花弁の先が鋸歯状となったもの一見撫子咲きに似る)石畳、巻絹、糸咲、狂咲などがある。但し、風鈴咲、流星咲、鳥甲咲などはこの頃まだ出現していなかった。

 続いて葉形で、四六種の図と呼称である。即ち、常葉、尾長葉、孔雀葉、獅子葉、鼠葉、蓬葉、糸葉、柳葉など見立による名称が面白い。末尾に茎が帯状に何本もが横一列にくっついたようなものには、△セッカと呼び今日尚石化として伝えられ、名古屋園芸では石化種のみで六系統を栽培している。

 後半は栽培法である。
 土、土拵の法、種下(たねまき)の法、苗分けの法、鉢の事、養ひの法、大輪につくる法、種を収(と)る法、変化の弁別、この項で、変り咲き株の選別法を色々書いている。例えば、「二度咲き(花の中からもう一つの花が出て咲く)は、ふと出来るもの故此種は必ず二度咲きとなるとは極りたることなし、その年きりの変りものなり、二度咲には親木なし」としている。