茎葉の珍奇さを追い求める
「長生草」
  群芳園々主著    平安秋尾亭蒼山図  天保六年刊
 
 千穐萬歳を寿ぐその名も長生草の一書を紹介する。

 著者は摂津の国細川村の群芳園々主、図は平安秋尾亭蒼山、天保六年刊 本文三十一丁内十七丁木版多色刷の美本である。

 内容は三都(京、大阪、江戸)に於いて、長生草(セッコク)の栽培が流行し、その栽培法と品種を解説し、その内三十三種を図示した。序文には漢文の湖上草伍逸史の記、同和文の神山草巣の筆があり著者の附言と続く。

 その附言を引用してみよう。
 長生草はおく山の巌(いわ)がねに生ひて神代よりめで給ひしに也 かしこくも少名彦の御薬と名に負大同のころには御寶とも名付給ひていともいともたふとき草になん もとより其効能は本草綱目にみえたる也 又小盆にうえて目をなぐさめ精気を養わこといふもさらなり其花は三年経し茎より咲出し蘭の薫りにもまされり

 されど唐土にもその花めでしより杜蘭(とらん) 林蘭(りんらん)と名を負せたりけん 其葉 其茎の姿くさくさあやありて奇品多かんめり 此ころ三都の人々もてはやし給ふ心のまにまに奇品の生出けるは誠に天地のめぐみにして治れる御代にながらふる心なぐさの植ものこれにしくものはあらじ。以下栽培法を記すが略す。
 品種五十五種、その内図のあるは以下三十三種。

紅雀、金剛丸、豆金剛、紫金剛、玉獅子、多賀金剛、宝金剛、雪丸、金華山、厚丸、圓中、南京丸、木田、紅木田、梅ヶ枝、桧ヶ枝、朝霞、錦丸、金光龍、縮緬丸、青丸、大江丸、金石、玉龍、琉球丸、青竜、盤石丸、大鷹丸、虎額丸、金龍、銀龍、都覆輪、富士丸        以上