青寒蘭「雪光」 刷り物
  明治十一年
 
 寒蘭(かんらん)は春蘭と並ぶ日本産のシンビジューム属の代表的種類である。

 花は十一月頃と三月頃に咲き前者を「寒蘭」と呼び、後者を「春寒蘭」と称し区別し、更に花色が多くは紫紅色であり比の方を「紫寒蘭」、一方青白色系に咲くものを「青寒蘭」、中間のものを「更紗寒蘭」と呼ぶ場合がある。

 当資料の「雪光」は花色から見て青寒蘭に属し、花期は画家松川半山の書き入れにより春寒蘭と思われる。

 葉は立葉系で白覆輪がくっきりと入り、花も白覆輪となり、これだけ立派な引札を製作して配りものをしたところは、当時としても同好者の間では注目された品種であったのであろう。

 刊記によれば、「明治戌寅春日、鷹需半山真水」 「南都 澹亭、崎陽 十州軒、浪華 測成堂」 「阪府 神田製、川西 松岡彫」 となっている。従って成寅は明治十一年、写されたのが春とあり春寒蘭であろう。

 所持者(栽培者?)は南都は奈良、崎陽は長崎、浪華は大阪であり長距離間在住者の共同出版であり大阪 で印刷された。この頃は江戸時代が色濃く残り、錦絵制作の技法が確かな作品である。