鉢花は今も昔も日本海側の山地から
しょう耳細辛図譜 (しょうは、けもの偏に章)
  著者名、成立年代、序文跋文などなし
 
 ショウジサイシンとは今日の園芸植物ではユキワリソウであり、植物分類ではキンポウゲ科のミスミソウやスハマソウを指している。しょう耳とはノロ(ジャコウジカ)の耳の形に葉形が似ているところから名付けられたと云う。しかし「牧野植物図鑑」のミスミソウとスハマソウの両種の解説に共に、しょう耳細幸は別種であると明記されているからややこしい。なぜそうなったのか、原因の一端があるいは本書であるとも考えられる。

 さて本書には著者名、成立年代、序文跋文などはなく最初から植物の解説文で始まる。

 「しょう耳細辛写真(内題か)加州白山ノ産二十四種 しょう耳細辛 和名三角草又ユキワリ草卜云フ小草也 葉三ツニ分レテ末尖ラズ厚クシテ新緑色大キサ七八分或ハ一寸余又ナル者モアリ茎ハ青紫色一根叢生ス 春数茎ヲ抽テ二三寸或ハ四五寸上ニ各一花ヲ開ク 大キサ五六分六弁或ハ七人弁又千弁モアリ 単葉菊花之如シ 白色此草品種甚多シ 花色各異り共二花謝テ新案ヲ生シ旧葉枯ル 其根杜衡ノ如ク紫褐色ナリ しょうハ朝鮮ニテ(ノロ)ト云獣ナリ 其耳二似タル故?耳細辛卜云フ」とあり以降に二十四品種の極彩色の図があり杜衡(カンアオイ)の図と解説六種、双葵(フタバアオイ)の図と解説一種の記載で終る。成立年代は天保〜嘉永頃と思われる。

 この書物の同系写本が英国キューガーデン(明治十四年伊藤圭介による写本)並に日本盆栽協会、その他未確認ではあるが二ヶ所伝存するという。

 平成の今日ユキワリソウの栽培は新潟、北陸地方が中心となり大変盛んで立派な写実銘鑑など発行されている。