草木のラッピングも礼法に従う
「包結図説」
  伊勢安斎著  天保十一年
 
 日本の礼法といえば小笠原流が知られている。本書もその流れを汲む一書である。

 そもそも小笠原氏は新羅三郎義光から出て長清の時小笠原を称し頼朝に仕え、以来弓馬の術をもってきて之、南北朝のころ武者所にあった貞宗が足利尊氏に仕え、以降、流鏑馬(やぶさめ)、犬追物(いぬおうもの)、笠懸(かさがけ)、草鹿(くさじし)、大的(おおまと)など弓馬の政実を伝え、江戸時代になって元服(げんぷくの)次第(しだい)、酌(しゃく)、萬請取(よろずうけとり)、萬躾(よろずしつけ)、書札(しょさつ)など諸礼式作法を始め、年中行事の作法、立位振舞、家の諸道具の置き方、進物の包装、諸物の結びに至るまでその作法を説き故実家の祖として今日に伝える。

 その一連の作法の一部分である「つつむ」と「むすぶ」の部分を摘出しその本意を共に図示されたのが本書である。

 著者は小笠原礼法の流れを汲む伊勢(いせ)安斎(あんさい)。天保十一年、京都静幽堂によって上(包) 下(結) 二冊として版行された。

 本文を少し引用すれば
一.およそ進物を紙にて包む事高位の人はだんしを用ひらるべし 大なる物を包むには大なるだん紙小き物は小だんしを用ふ……
一.包みたる物を水引にて結ぶ事 白紅の水引を用ふべし 高位の人は金銀の水引を用らるべし……

一.包たる物に其物の名を書付る事はなき事也 包紙の内の物の名数は日録に書く也……
一.物を包むには其物の紙の外へ少し見ゆるやうに両端を出して包む物也 何とも見えぬ様に紙の内へ包みこむ事あるべからず……

 草木の包様は枝ものと草ものとは紙の折りよう、水引の結び方も異なっている。