「金のなる木 不景木の根だやし」
  
 



 ひと昔前、多肉植物のクラッスラの仲間、「花月」と云う和名のある植物の節間に五円硬貨を付けて「金のなる木」と変名して園芸市場に出荷したところ、売れて売れて、植物を求める人々の「遊び心」であったのでしょうか。

 さてこの資料は園芸史資料としては少し横道へ逸れたものながら、今から118年前、江戸が東京に改まったばかりの明治17年、東京の林吉蔵によって画かれ出版された錦絵版画である。題して「金のなる木 不景木の根だやし」。

 画面右側の鉢植えの「上景木」の廻りにはえびす、大黒、幸福神を始め力士、役者、芸妓、金の有る人が取囲んで、地植えになっている「不景木」を根を掘起し、棒で突き、縄で引き倒す人々は、商人、百姓、職人、料理屋、茶屋女、車屋らである。中間で外国人らしき人が「どこの国もしんぱいなものじゃ」と見ている。

 さてその不景木をよく見れば  主幹は「きんゆうあし木、古今無類の不景木」とあり、もうこの時代に金融の悪るいは不景気の根幹をなすことを見抜いている。この不景木の枝には「くやし木、しかたな木、つまらな木、しんきくさ木、はりあいな木、せけんさびし木、いん木、おゝふさ木、諸物価やす木、うれな木、金かりおゝ木、かしてな木、しごとはな木、あきないな木、そん木、・・・」など。

 上景木は
 主幹は「上景木 ゆうづふよ木」から始まり、枝には「五こくみのりよ木、いくさな木、まけぬ木、おめでた木、まわりよ木、ありかた木、ひまな木、引つゞ木、よう木、うつくし木、富木、いそがし木、ねるまな木、はたら木、住に多木、見せびら木、早お木、大陽木、せけんにわし木、うれし木、評ばんよ木・・・・」など。何れもなっとく。