書名 : 剪花翁伝前編 せんかおうでん
冊数 : 全5冊 (巻ニに記載)
別書名:
著編者名 : 中山雄平//〔選〕
出版年 : 1851 嘉永4年
注記 : 剪花(切花)保育の法を四季に分けて述べたもので、各草花の特色、開花の時期、
品種なども合わせて記す。カキツバタの促成栽培がこの時期すでになせれていたことを示す文献。
写真 写真
注釈 ○燕子花 此花多種也其四五種左の如し。いずれも開花三月中旬也
○橋姫 中中心青く縁白隈(くま)になる 
○村雲 花名の如し ○吹墨(ふきすみ) 白地に青き吹点あり
○濃紅(こいべに) 紅梅色に淡青を含めリ 
○淡紅(うすべに) 淡赤に淡青を帯びたり
○白 極白あり並白あり ○藍 大輪濃色あり並花あり
○六葩(むはなびら)なるものあり俗に是を六葉といへり
此花に青色はなしいづれも変色花なり 方陽面 池水辺の湿地よし
常に水の滞らぬやうにすべし 肥淡小便春芽出し前に潅ぐべし
下種(たねまき) 春彼岸にすべし されと成長遅し 
分株 春秋良彼岸ともよし 分株の方は分べき株を地中にて
斯(かき)とるべし残る親株動痛まずして栄(さかえ)はやし

夏五月
四季咲燕子花
花青色 開花五月中旬より咲きたり 是二度目にて夏の花なり 又土用より秋の花出る
それよりおよそ十一月まで節々に花出る 故に四季咲きと称なり 育て方は燕子花と同じ
早燕子花(はやかきつばた)
色青く尋常の花種也 開花正月上旬 方陽面
地この地たるや俗に掘抜と称せられ井水の昼夜沸流るる水涯の南陽受たる片下つらの地に株を植えて西北の風寒さをよく囲ひこの水の温
暖なるを惹きいるときは春はやく花咲くなりこの花初夏の頃も花咲くねりされど暖気になりては平常の花より却て遅し

肥淡大便秋彼岸に根際に溜りて水を二日ごとに干上げ根本の高の方に右の肥を入れまた三日ばかり干切りて後この水を惹入べし
分株 三月燕子花の條にみえたり

(12、1月の自然低温感応後に井戸水の15℃くらいの湧き水で地温を暖め、また囲いで寒さを防いで開花を早めた技術である。おそらく四季咲き品種を使ったものと思われる。)
地軸水(ほりぬきみず)
を惹いて
燕子花を
早春に開かせる図


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