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江戸時代に来日したヨーロッパ人の内、ケンペル、ツンベリー、シーボルトらは、日本の植物やそれらの園芸種を数多くヨーロッパヘ紹介した。又その半面、日本人は無類の植物好きであることも知られるようになり、主としてオランダ船により、外国産の珍しい植物が次々にもたらされ、それらの植物を、試行錯誤を繰返しながら栽培法を身につけ、観賞植物の仲間に加えていった。
そうした外来植物の渡来を記載した資料は随所に所見できるが、ここで紹介する「舶来植物図譜」は、尾張「又日庵」なる人の編集らしく、資料価値は高い。本書は、故天野景從氏(東海高枚生物教諭)によって、明治四十一年写本されたものであるが残念ながら本文中記載事項以外の奥付はない。
内容の一部を紹介すると
●マツバボタン ホルヒエス 一名「ホルテエラガ ランテワールール」トモ云。
文久二年大阪花戸ヨリ尾州へ来 新舶来小草ニシテ中輪 紫花 黄花 黄紅色花、四月(旧暦)頃ヨリ秋九月迄花アリ一日花也 白紋色アリ 実ヲ蒔テ色々生ズ 又サシキシテ活 馬歯筧菜(スベリヒユ)ノ一種也 南米原産ニシテ庭園二培養ス
●ニチニチ草 つくばねあさがほ(ペチュニア) メリケン産花戸名 本名不詳 紅卜白トアリ 文久二壬戊五月横浜ヨリ来ル。
とあり、図には白、紫紅、淡紫、白地に紅爪ぼかしの四種がある。
この他、オランダカイウ(カラー)天保初年慶州へ来ル。キンサンジコ 金箋慈姑(アマリリス)嘉永四辛亥年花初メテ咲ク。など興味深い記事が多く、近世渡来植物史を研究する上で、本書は貴重な資料として位置づけられるであろう。
( )内は筆者記入。
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