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元禄年間以降、各分野に色々な植物図譜が編著され、出版されたものも多い。そうした中で総合的を植物図譜は本書を嚆失とし、今日では世界的に高く評価されている。
編著者である岩崎常正(天明六年生、天保十三年没)は幼名源蔵、号灌園。幕臣小普請組に属し、俸禄七十俵十五人扶持(現在の平均的サラリーマンの年俸位)長じて小野蘭山の門に入り、又推挙する人があり屋代弘賢(やしろひろかた、幕府書物奉行)の大編纂事業「古今要覧稿」の書籍手伝となる。この事が彼をして全国的視野と博学をもたらし、後に植物、園芸、物産などの多くの著作を顕す結果となった。
さて当本草園譜は全九十二冊。なぜか最初巻五から始まり九十六巻に了す。五〜十巻の六冊は木版無彩で出版されたが、一部定期購読者には手彩色により届けられ、十一巻からはすべて灌園閣蔵の用紙を用い彩色写本により配られた。灌園在世中に五六巻まで出来上がり後は長男信正と門人らの手により引続き写本され弘化元年完成した。この間実に十五年の歳月を要した。
内容は本草学を基とした分類により、山草、芳草、湿草、毒草、蔓草、水草、石草、苔類、麦稲、葷菜、柔滑、鋪菜、水菜、芝?、五果、山果、夷果、水果、香木、喬木、潅木、苞木、図はないが服帛類として生活物産にも言及している。
観賞植物に鋭意力を注ぎ、ケシ、ユリ、センノウ、ハス、キク、ウメ、ツバキ、ムクゲ、モモ、マツ、タケなど多くの品種記載があり、当時の品種名や特徴を知り得る貴重な資料でもある。
灌園閣罫紙本 |
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