江戸後期の外来植物図譜
「拾品考」
  野田青葭著  石崎融済画 嘉永三年刊
 
 著者は長崎の本草家野田青葭、図はやはり長崎派の画家石崎融済、嘉永三年の刊。題名の示す通り十種類の舶来植物に対し論考し、図は木版多色刷十種を附す。
 輯録されている植物は次の通り

 藤蔓性相思子 鳳梨 金毛狗脊 番海芋 多麻林度 丁香樹 
 にくづく樹 蠻産山慈姑 大葉せんな 莫斯筒未亜せんな 紅豆樹
の十一種が各一頁に一図とし西洋のボタニカルアートの技法を取り入れられている。シーボルト来航以来彼に就いて日本の植物の作図を行った川原慶賀と石崎融済との関連は専門家の意見を待ちたい。

 著者の野田青葭は、名は源三郎、山本亡羊に本草学を学んだこともあり、長崎出島を通じ輸入されてくる薬種目利(やくしゅめきき)を職業とし、安政六年植物試作農場であり植物場の植物方も任命されている植物の専門家であったので、舶来植物を実際に栽培したものを融済に画かせたと考えるのがすなおであろう。実際図や標本は転写でないことが読み取れる。