観葉植物をも評価した殿様
「日新會冩生」
  
 
 本書には刊記などまったくないが、植物研究雑誌昭和三年六月号の牧野富太郎の記事によれば、「萬香亭日新會草木品評表」なる別本があり、嘉永三年から七年にかけて富山藩主前田利保の主催により珍竒植物持寄品評会として日新會を組織し、当日出品されたものを、上から絶品、竒品、上品、異品、?品、雑品とに品評し、上位三位を木版墨刷りとし手採色を施して同好の志に配ったものと考へられ、版心に月日が刷込れていて全七回分の記録である。前田利保については本誌九七年八号本草通串証圖の項にて紹介済みであるが、江戸の博物学同好会である赫鞭會(しゃべんかい)の会頭として活躍した本草大名の一人である。
 さて本書の内容は植物図譜的でもあり全九十一種が図示されている。各図には種名時には別名も記し、出品者名は全て雅名を用いられ例えば戀香(利保本人か)尋芳 搜紅 醉花 伴花英 花媒 花姑 嬌紅 迷春 らである。
 植物の多くは今日で言う山野草に類するものが多く例えば虎耳草(タキワキソウ)上品二葉草竒品、君ヶ代(コアニチドリ)上品、一ツホクロ(イチヨウラン)竒品 チドリ蘭竒品、姫石楠竒品、マイツルソウ上品、立山ガンヒ竒品 白山ナデシコ(シラヒゲソウ)竒品、ツガザクラ上品 立山銀梅花絶品、白花龍胆(りんどう)絶品などである又外来植物も多く、陸英(天竺ボタン)竒品 蒲桃(フトモモ)竒品 緑茉莉(まつりか)竒品陳家白薬(キンレンカ)竒品などがあり、観葉植物類として 紫ヲモト竒品 朱蕉(アカドラセナ)竒品、赤榕(インドゴムノ木)上品、鳳梨(パイナップル)絶品などあり、唐室を利用して栽培されてたことであろう。

 図は、現在販売される観葉植物の、Cordyline teriminalis Kunth cv.Aichi Aka コルディリネ’アイチアカ’の親となったものと思われる。