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上 本草通串
左 本草通串証図 |
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この本の編著者は、富山藩主前田利保(としやす)。寛政十一年利謙(としかね)の第二子として生まれ、天保六年に藩主の座に就く。生来博物学に興味を持ち、江戸在住の大名旗本らと共に博物同好会、「赫鞭会」を組織し会頭を務める程の熱の入れよう。従って研究も中途半端でなく、徹底しかつ大がかりであった。その成果として編纂されたのが「本草通串」並に「本草通串証園」である。
「本草通串」は、我が国で著作された書物から、主として薬用植物の種類別に抜き書き編集された。例えば第一巻から四巻まではすべて甘草の記載であり、この一書があれば他書を見る必要がない位群籍から集積されている。全九十四巻、五十四冊として嘉永五年に藩版として刊行された。
続いて本編に記載される主な植物の図集として「本草通串証図」が同藩絵師、山下守胤(もりたね)と松浦守実(もりよし)に画かせ、同じく藩臣岡田淳之の序文(嘉永六年正月)を添えて、恐らく序文と同年に刊行されたと考えられる。(刊記なし)
証図は全五巻五冊、一頁に一国、全一六五図がありすべて木版多色刷、藩内産の五箇美濃紙を用いた立派な造本である。内容は当然のことながら薬草が主体であり、一〜四巻は山草として、カンゾウ、ニンジンなどが並ぶが観賞園芸の面から見れば例えばキキョウなど一重紫色の他に白、白紫絞り、八重咲き、驚くことに「花戸にあり」として黄色種が画かれている。更には「天竺ボタン」としてダリヤが、又巻五巻は二七種のシダ植物の記載があり、我が国初のシダ図集として見るべきものがある。園芸植物図譜としても興味が持たれる一書である。
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