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本書は、当時毒性のあるとされていた植物の図譜並に解説書であるが、通常の著作本とは少々異なり、編者は舎人(とねり)重巨(じゅうきょ)(姓は清原、字名(あざな)は君規、又は武兵衛)尾張藩世臣、藩主宗睦(むねむつ)の小姓から身を起こし、後四百石を禄した。当時尾張では、京都や江戸と並び称される位い、本草学が盛んで松平君山を筆頭として水谷豊文(ほうぶん)、沼田正民、大窪昌幸らがおおいに活躍した。そうした多くの研究者、同好者三十九人に草木一品以上を受け持たせ、挿図並びに解説文の寄稿をもって成立した。
前編本文三十五丁、六十二種。後編本文三十四丁、三十二種、付録として二十八種。全百二十二種の図説である。一番多い寄稿者は水谷豊文で十六種、次いで沼田正民で十四種、編者の舎人重巨は付録の最後の銀杏(ぎんなん)一種のみで編輯者に徹したようである。
編輯者に敬意を表しその解説文を記せば「銀杏(ぎんきょう) 本草綱目 生(せい)に毒なく熟(じゅく)に毒あり樹の形状性譜に挙ぐ此果雌雄あり亦性譜に委し 生にて食すれば酒毒を解(げ)し痰を降ろし虫を殺す 熟にて多食すれば気を塞(ふさ)ぐ 小児驚風(きょうふう)を発し疳(かん)を煩(わずら)ふ 鰻魚(うなぎ)と同食すべからず」とある。
文政十年版、名古屋永楽屋東四郎製本による特装本 |
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