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「おのが葉に 月おぼろなり 竹の春」 蕪村
季語「竹春」は秋を指し、里山近くに繁茂するモウソウチタやハチク、マダケなど竹類は緑の色を増し、木々の紅葉と一対をなして日本の秋を彩る。
「桂園竹譜」は岡村尚謙著、志村知孝画によって文政十一年五月に成稿、本格的な竹類図譜であり、今日極少部数写本によって伝本する貴稀本でもある。
内容は第一に総論として、我国有史以来の竹についての諸説を論じ、利用にも言及している。
タケの品類については、呉竹、おぼたけ、かはしろたけ、またけ、かわたけなど五十八品、付録として竹如意、方竹刀の二項を加えて全五巻五冊。何れの項も古事、和歌、釋名、正誤など小項目として詳細に且つ幅広い書物からの引用がなされ、出典を明らかにしている。例えば、呉竹の一部を引用すれば、「……呉竹の名は 古今和歌集、竹取物語等にみえたれど常葉集にはいまだその名を載さるによれば 此の竹の呉国より来れるは平城天皇よりはるかに後のことなるべしと思ひしに日本紀略に弘仁四年天下の呉竹ことごとく枯しよしみえたればその天皇より以前に此種の渡りこしものなるほしるし……」
著者の岡村尚謙は名を遜、桂園と号し、医をもって下総国高岡藩主井上筑後守に仕え、天保八年に没した。(生年不明)医の師は不詳。本草を岩崎常正に学び、屋代弘賢の「古今要覧稿」の編纂には大いに助力したと伝う。
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