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本書は、「花壇地錦抄」と同じ江戸の種樹家伊藤伊兵衛三之丞によって著作された。五巻五冊横長線装、元録五年江戸松曾三四郎(しょうかい)によって開板された。
内容はツツジ類(一〜三巻 百六十四種)、サツキ(四〜五巻 百六十一種)の品種解説並に栽培管理書である。各々の品種には花又は花と小枝をつけた図が附され、花の大きさ、色彩の飛入(かすり)、絞り、吹掛けなどの花色の変異を図に現わし、更には、ツツジ類では○■▲などの記号により早咲、中咲、後咲を記し、サツキ類では「まつしま」を基本種と定め、同じ時期に咲くものを●、早く咲くものを凸、おそく咲くものを@と記号表現した。他に類例の少ない表現法を用いた著者の力量に驚かされる。
五巻末には「つつじの五花」として、「きりしま(紅)、りうきう(白)、いわつつじ(赤)、しろせんゑ(自八重)、くろふね(桜色)。此の五種をつつじの五花と云いて昔より名花と定たり」、続いて「さつきの三花」には、「まつしま(咲分)、源氏(うす色)、さつまくれない(紅)、是さつきの三花といひて昔より賞美せり、(中略)近年見事な花五花あり、みねのゆき(うす色白)、人丸(かき色に白筋)、かぐらおか(咲き分)、こつばさ(紫八重)、はかた白(博多白)(はく)。此五種三花に追加して「さつきの八木」といへり」 こうして元禄の頃から‘まつしま’や‘博多自’は名花として数えられていた事を識る。
さて本書は元禄八年刊の花壇地錦抄では「長生花林抄」(ちょうせいかりんしょう)と改題したことが記され、享保十八年刊本も伝存するし、「三花類葉集」(さんかるいようしゅう)とも名付けられたようで、零本ではあったがこの題簽の付された本を見たことがある。
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