アサガオブーム最中の名著
「あさかほ叢(そう)」
  江戸四時庵形影著  文化14年
 
 江戸後期のアサガオ栽培熱は大変なもので、江戸、京大阪を始め全国的に大流行し、その結果残された文献資料は多い。

 「あさかほ叢」は、四時庵形影著、琴鱗ら三人の図、上下二冊 文化十四年大阪と江戸の書物屋四軒の共同出版による木版多色刷の美しい図版本である。上巻に 朝皃や 硯にはねる 窓の露 四時庵の句並に杏花園(太田蜀山人)の漢文題言。

 次いで 例には
一 此小冊を撰むのはじめ異体百品と数を定たれば稿なりて後見たるものを今年来年の変生を集めて次で何篇を出す(最初から後篇を出すつもりらしく巻末に二篇三篇近刻とあるもそれらは見ない)その他花形、花色、葉形、葉色などそれぞれ詳細に記し、上巻図五十種解説一百八十五種。下巻には図五十種解説一百十七種に加えて常体種二百余が略して記されていて当時の品種分化の大略が望観できる。しかし嘉永、安政期に比べると花形の奇態度は今一歩である。

 後記に
風朝かほは其はじめ黒白(タネの表皮の色)二種より出て今七百全品に及ふもの有、変生しやすきいわれなり、されば奇品孤種といへとも種の取かたやしないやうをしらざれば、漸に変生す変生すれはよきにもあしきにもなるものならあしくはなりやすく よきにはうつりかたし この故に其のあらましをしるして好土に伝ふ 以下各品種系統ごとに栽培法と採取法など詳細な記述がある。