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本書は岩波書店刊の国書総目録によれば、著書は建仁寺潤甫とし、奥付では元禄四年正月、京都書林八尾常成、彦根書林八尾恭豊の共同出版である。本文三十丁、前部に南禅寺永瑾の漢文による序が三丁、後跋は秋香舘能散人で一丁を附す。序は永正十六年に既に書かれていること。跋文中、「・・・本朝近来東山ノ武公尤ノ此ノ花ヲ愛シテ百種ヲ撰テ画ニ之ヲ図セシメ・・・」とあり、或いは序と共に勘案すれば室町時代に遡る成稿とも考えられる。
さて書誌的なことはさておき、本文一頁に一又は二図が描かれ、品種名と共に各々七言絶句による品種を湛える詩が附されている。ここ図示された(右頁右則)桜菊について次のごとく書かれている(読み下し文とする)「桜菊百品菊開きて清くして塵なし 黄に非ず白に非ず淡紅新なり
晩秋斉く見る桜花の色 籬外霜に微て春を競ふが如し」うす紅色の中輪ギクに対しての賛辞を惜しまない。
こうした書物が出版されたことは、元禄期にはキク作りに関心を示す人が多くなったことと考えられ、以降キク関連の書物の出版が盛んになった。 |
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