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サイシン(細辛)と呼ぶ四号鉢位で育てることのできる、丸い葉をした観賞植物をご存知の方は、日本の山野草や伝統園芸植物に詳しい方である。
サイシンはウマノスズクサ科の多年草で、葵の紋どころで有名な、フタバアオイや、ギフチョウの食草として知られる、カンアオイもこの仲間である。例えて申せば、シクラメンの葉だけのような姿形をしている。誠に地味な植物であるが、日本の里山近くに自生しその葉紋は、さまざまに変化があり、じっと見ていると、いぶし銀的美しさがある。
この植物を観賞植物の一つとして取り上げたのは、享保(1716〜1736)の頃と云う。その後文政十二年版の「草木錦葉集」には六種が図入で紹介され、本格的に観葉植物の仲間入りしたことが知れる。又、天保十二年には番附様の刷ものも存在し、これには45種記載があると云う。
当文庫の資料は明治に入ってからの番附が数点在架し、何れも愛知県内の出版が主力で明治三十年代に入って他の地区での出版が見えるようになり、明治初〜中期には名古屋を中心にサイシンの栽培が流行したと考えることができる。平成の現在も、この地区で愛培者が多いようだ。
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