 |
|
萬花園(旗本)の編、題名通り三十六品種の変り咲き朝顔の珍花奇花の木版多色刷の美本である。序文は漢文で杏葉舘この人も旗本の大身で五千石を領し、佐賀藩主鍋島直正の兄に当り、鍋島直孝が本名。生来の園芸好き者で、ナデシコ、アサガオ、キクの大会などには必ず名の出てくる人。
本文中にも本人の出品になるニ品種の記載がある。図は服部雪斉、後跋は編者の萬花園主人による。
少し紹介すると、「(前畧)近き年よりさまさまの花咲いて、葉さへ色さへいとめづらかなるか数まさりぬれば愛いつくしむもあまた成ゆきてとほく国郡をへだてたるあたりまでも玩ふことと成ぬるは、今をさかりの時とぞいはまし。その中にめもあやに妙なるをこれかれと画にうつしおきけるを此ままいたづらになしなむもほいなければ、特にすくれたるをえらびいでて三十六人の歌仙になそらへて絵草紙めくものに作りて同じ心の人々にもわかちあたへてんとてかくものしつるになむ
嘉永甲 仲秋 萬花園主人識 」
幕末の頃、武士も町人も一処になって朝顔の珍花作出に夢中になった姿が伝えられている。
|
|